課長に恋するまで
 レイ・リーの店を出た後は聡さんと渋谷まで歩いた。
 通り沿いに聡さんの出身大学があって、聡さんは懐かしそうに学生時代の思い出を話してくれた。

 聡さんの友だちはみんなお洒落でブランド物のいい服を着てて、お洒落な人が多かったそうだ。それで聡さんも友だちに合わせて服に気を遣うようになったらしい。

「バイト代が全部、服代に消えたよ。一人暮らしだったからきつかったなー。もやしにごま油をかけて食べたりしてさ。ごま油に飽きて、次は醤油、ケチャップ、ソース、マヨネーズ、それから、バターも合えた。調味料は全部学食から持って来てさー」

 聡さんが懐かしそうに笑った。
 聡さんにそんな学生時代があったのは意外だった。
 その後も、学生時代の貧乏生活について、聡さんは話してくれた。
 面白くて話に引き込まれた。

 通りを歩きながら大笑いした。

 楽しい。
 きっと聡さんと結婚したら毎日笑ってる。

 そう思うのに、笑いながら悲しくなった。
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