課長に恋するまで
 バスルームから出ると、そばに聡さんが立ってた。
 眼鏡の奥の聡さんの目は赤くなってた。
 聡さんの顔を見て何も言えなくなる。

「みーちゃん、バスルーム寒かったでしょ。おいで」
 
 聡さんに手を引かれてベッドに行った。
 ベッドに座ると聡さんが掛布団をかけてくれた。
 聡さんの優しさが痛い。
 聡さんを好きになれない自分が嫌になる。
 
 こんなにいい人なのに……。

 どうして聡さんに恋をできないんだろう。
 どうして課長だけ特別なんだろう。

 聡さんは隣のベッドに座って、こっちを見た。
 眼鏡越しの瞳が責めるように見てた。

「話してよ。みーちゃんの好きな人の事。僕には聞く権利があると思うからさ」
< 229 / 247 >

この作品をシェア

pagetop