課長に恋するまで
 聡さんに最後のお願いだと言われて、そのままホテルに泊まった。
 もちろん別々のベッドで休んだ。

 明け方までとりとめのない話をした。
 子どもの時の事、学生の時の事、社会人になってからの事。
 お互いに印象的なエピソードを披露しあった。

 不思議と穏やかな気持ちでいられた。
 聡さんと話しているのは楽しかった。

 聡さんを好きになれたら楽なのにな。
 こんなにいい人をどうして好きになれないんだろう。

 そんな事を考えていたら、聡さんが言った。

「みーちゃん、自分を責めないでね。みーちゃんとは残念な結果になったけど、僕はみーちゃんに会えて良かった。こうして一晩一緒にいてくれたから気持ちの決着がついたよ」

「聡さん……」

「みーちゃんもさ、そんなに好きなら課長さんと気持ちの決着つけておいでよ」

「でも、結婚してますから」

「関係ないよ。ぶつかって来なよ。一度でも気持ちを伝える事が出来たら次が見えると思うよ」

 聡さんの方を見ると、穏やかに微笑んだ。

「みーちゃん、がんばれよ」
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