課長に恋するまで
 金曜日の夜。

 会社帰りに鈴木さんのお家にお邪魔した。

 月曜日に鈴木さんに課長を好きだと打ち明けて、それで夕食に誘ってもらった。外よりも家の方がじっくり話が聞けるからと。
 
 鈴木さんのお家は江戸川区にあって、三階建ての新しそうな一軒家だった。
 結婚した時に購入したのだと、駅から歩きながら鈴木さんが話してくれた。
 間取りは4LDKで、二階がリビングとキッチンになっていた。

「おかえりー」

 鈴木さんとリビングに行くと、エプロン姿のご主人が出て来た。
 がっちりとした体型で、眉毛が濃くて、ちょっと怖そうな感じに見えるけど、笑顔は優しそうだ。

「かあちゃん、おかえりー」

 六才になったかず君も出迎えてくれた。
 来年小学校に入るらしい。
 眉毛はご主人そっくり。優しい目は鈴木さんに似てる。

 写真で見ていたけど、初めて鈴木さんのご家族に会う。

「はじめまして。一瀬です。いつも鈴木さんにはお世話になっております」
 ご主人にお土産のワインとチーズの入った紙袋を渡した。

「一瀬さんのお話は家内からいつも伺ってます。どうぞ、楽にして下さい」

 リビングのソファを勧めてもらい、とりあえず腰を下ろした。

「一瀬ちゃん、楽にしててね」

 鈴木さんはそう言って、三階に行った。
 
 鈴木さんがいなくなって、おろおろしてるとかず君が来た。

「はい」

 いきなりwillリモコンを渡される。

「卓球やろう」
 かず君に誘われた。
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