課長に恋するまで
「あ、ごめんね。一瀬ちゃん。今日は一瀬ちゃんの話を聞く会なのに」
 
 鈴木さんが申し訳なさそうにこっちを見た。

「いえ。なんか家での鈴木さんを見れて、微笑ましくなりました」
「そう?」

 鈴木さんが意外そうに眉を上げた。

「で、課長の事を好きで、悩んでるんだよね」
「……はい」
「婚約者の人はどうしたの?」
「正直に好きな人がいるって打ち明けました」
「それで?」
「わかってくれました。だから結婚はなくなりました」

 鈴木さんとご主人が驚いたような顔をした。

「そうなんだ……」
「好きな人に気持ちぶつけて来いって、背中も押してくれました」
「いい人だね。その人」

 鈴木さんが感心するように言った。

「俺だったらそこまで言わないな」

 ご主人が言った。

「うん。きょうちゃんは絶対に言わない」

 鈴木さんが笑った。
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