課長に恋するまで
 課長は午後は席にいなかった。打ち合わせや外回りで出ているようだった。夜も早速接待が入っているらしい。

 という事を昼から戻って来た石上に聞いた。

 定食屋のお味はどうだったか聞こうとしたら、石上はもう席にいない。
 石上も午後は得意先へ御用聞きに出てしまう。

 商社なので、総合職の石上は外回りが基本だ。
 商社という所は自分の所では物は作らない。
 基本的には買い手と売り手の間に入ってつなぐのが仕事だ。
 主に石上はアパレルメーカー(買い手)と、アパレル素材を作るメーカー(売り手)との間に入った仕事をしている。
 例えばこんな物が欲しいとアパレルメーカーから相談されたら、それを何が何でも探してくるのが仕事だ。
 石上はいつも自分は便利屋だって言ってる。
 だから、つねに相手が何を欲しいのかという事を意識して仕事する。
 その為、得意先の様子を伺いに行くのは基本だ。

 そして私はそのサポートをするのがお仕事。
 見積書などの書類を作ったり、得意先の管理をしたり、関係各所に手配したりと。
 まあ、細々とした仕事だ。

「一瀬先輩、中国からの荷物がまだ横浜に到着してないそうです」

 電話を受けた間宮が泣きそうな声で言って来た。
 こういうトラブルに対応するのも仕事だ。
 胃がキリキリと痛くなる。

 なるべくトラブルには遭遇したくない。
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