課長に恋するまで
「あ」

 階段を上りながら、課長が何かを思い出したように口にした。

「一瀬君、今の話……」
「何です?」
「あの朝の女性が一瀬君に似てた気がして……」
「私に似てたんですか?」
「うん。似てた……かな」

 課長が立ち止まって、こっちを見た。
 じっと見つめられドキっとする。

「やっぱり、わかんないや」

 課長が笑った。

「……私だったりして」

 小さな声で言った。

「え」

 課長が目を見開いた。
 誤魔化すように慌てて階段を3段駆け上がる。
 一段踏み外して、滑り落ちた。

「危ない!」
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