課長に恋するまで
「一瀬ちゃん、大丈夫?」

 給湯室でお茶の準備をしていると、鈴木さんが声をかけてくれた。

「朝からみんなの前で説明しろなんてびっくりだったね」

 鈴木さんが面白がるように言った。

「いきなり過ぎて死にそうになりました」
「でも、えらい、えらい。トラブルもちゃんと対応できたし、説明も出来てたよ」
「だといいんですけど。なんか課長に睨まれてる気がして」
「そんな事ないと思うけど」
「絶対課長は私の事が嫌いなんです。きっと紹介した定食屋さん美味しくなかったから怒ってるんです」

 鈴木さんがお腹を抱えて笑った。

「いいね。その被害妄想。小学生レベルで」
「だって、それぐらいしか睨まれる理由ないじゃないですか」
「睨んでないってば。トラブルについて情報を共有する事は大事な事だよ。対応に当たった一瀬ちゃんが一番事情をわかってるから、あてたんだと思うよ。上村課長って、仕事できる人だと思うけどな」

 鈴木さんの言う通りで、みんなの前で説明を求めたのは業務上必要な事だと理解してる。

 だけど――ちょっと苦手だ。

「なんか課長、怖いんですよね」
「そうかな。普通だと思うけど」
「相性悪いのかな」
「決めつけるのはよくないよ。まだ二日目」
「ですよね」と言ってみるが、この先いい印象を持てるんだろうか。
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