課長に恋するまで
「間宮、なんで泣いてるんだよ」

 間宮を見て石上が切れ長の目を丸くする。

「一瀬、後輩いじめんなよ」
「いじめてないわよ。それより何?」
「新しい課長が来てるんだよ。挨拶して来い。間宮は無理か」

 石上が困ったように頬をかく。

「来週の月曜日から来るんだよね」
「ああ、長野支社から来る。えーと、確か上村さんだ」

 石上がもらったばかりらしい名刺を見て名前を確認した。

 名刺を覗き込むと
 
 上村(かみむら)幸一(こういち)
 
と書かれていた。

「顔を合わせるのは月曜日でいいよ。間宮がこうだし」

 石上に言った。

「先輩、大丈夫です。ご挨拶して来て下さい」

 間宮の言い方が健気でついててあげたくなる。
 間宮は愛くるしい見た目の女の子って感じの子だ。
 
「いいのよ。間宮」

 間宮の栗色の頭をよしよしと撫でた。
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