課長に恋するまで

夕飯食べた?

 その日は定時で会社を出て地下鉄に乗った。

 午後六時台の車内はぎゅうぎゅうに混んでる。この中に月曜日の朝、助けてくれた人もいるかもしれない。
 そんな事をぼんやりと考えた。
 覚えてる事は背が高くて、レジメンタルのタイをしてて、優しい声だった事。

「大丈夫ですか?」

 そうかけてくれた声は本当に心配してくれてる感じがした。
 どうして顔を見なかったんだろう。
 昨日よりも後悔が強い。

 もう一度あの人に会って、お礼が言いたい。
 でも、結婚指輪をしてた。
 会ったりしたら、あの人の迷惑になるかな。

 そんな事を考えながらスマホを見てたら、大学時代からの友人、紀子(のりこ)からメッセージが入る。

【彼にプロポーズされました!結婚します!】

 え――!
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