課長に恋するまで
 紀子とは大学卒業後も週一で会うぐらい親しい。

 彼女は恵比寿にあるゲーム会社に就職して、女性を対象とした恋愛ゲームを作ってる。

 素敵なイケメンが出て来て、イケメンごとにシナリオがあってストーリーを進めていくというやつだ。
 小説や漫画を読むのに近い感覚かもしれない。私も紀子が作ったゲームをした事がある。

 そんなゲームを作ってる紀子だけど、彼女も私と似た所があって、現実の男の人にはときめけないでいた。

 このままじゃいけないと二人で26才までに結婚して寿退社をするという事を決めた。
 それでこの一年間は紀子と合コンに出まくった。

 その結果、ますます男の人に対して恋愛感情が湧かない事を私は知った。
 そして紀子は結婚にたどり着いたという訳だ。

 ああ、置いていかれちゃったな。

 ゲームの中のイケメンとは恋が出来たんだけどな。

 地下鉄のホームのベンチに座って、紀子からのメッセージを眺めた。
 返信をしようと思うけど、さっきから何て書いたらいいかわからない。

 おめでとう。

 そう素直に言えない自分に嫌になる。
 やっぱり私は恋愛とか無理なのかな。

「一瀬君?」

 ベンチに座ってると、そう呼ばれた。
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