課長に恋するまで
 駅前のファミレスは夕食の時間帯にしては空いていた。

 大学生ぐらいの笑顔の可愛いウェイトレスに案内されて、窓際のテーブル席に座った。
 テーブルを挟んだ向かい側にはきちんとスーツを着た上村課長がいる。

 課長とファミレスなんて、想像もしていない展開だ。
 それは課長も同じらしく、少し困ったような顔をしてこっちを見てる。

 会社の外で会う課長は表情がある。
 眉毛をほんのわずかに上げて、驚いたり、瞬きをしたり、微笑んだりして。

 先ほど駅のホームで声を掛けてくれた時、課長は驚いた顔をしてた。
 課長の顔を見た瞬間、なぜか泣いてしまった。

 知ってる人に会えた事に安堵したのか、紀子の結婚がショックだったのか。
 課長は泣き止むまで隣に座っててくれた。

「一瀬君、夕飯食べた?」

 泣き止むと、課長はそう聞いてくれた。
 そして、現在にいたる。
 
 向かい側の席でメニューを開いて、真剣に見てる課長が妙におかしい。
 昼間は苦手だと思ったけど、今はそう思わない。

 なんでだろう。
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