課長に恋するまで
「同じ駅だったんですね」

 オーダーが終わって、水を飲んでると課長が言った。

「みたいですね」 

 コップを置いて課長を見る。
 会社とは違う、穏やかな顔をしていた。

「えーと、あの、課長の分もドリンクバー取って来ます」

 目が合うと慌てて席を立った。

「気を遣わないで下さい。僕も一緒に行きますから」 

 課長も席を立って、一緒にドリンクバーまで行った。

 すぐ後ろに課長の気配を感じて、少し緊張する。

 課長はウーロン茶を取り、私はアイスティーを取って、席に戻った。
 再びテーブルを挟んで向かい合う。

 えーと、何か話題、話題、話題……。

 そう思っていたら、急に課長が笑い出した。

 びっくり。

「あ、すみません。君が困った顔してるから、ちょっと面白くて」
「面白い?」 

 課長の口から面白いって言葉が出た事にも驚いた。

「それはお互いにですかね」

 伺うように課長が見た。
 目が合って、胸がざわざわする。

「課長は困ってるんですか?」
「いきなり夕飯に誘って君を困らせてないかと、心配してる所です。よく考えたら退社後も上司となんか一緒にいたくありませんよね」
「いえ、そんな事は……」
「無理しなくていいですよ」

 課長が穏やかな顔をして笑う。
 会社にいる時とは別人みたいに柔らかい表情をしてる。
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