課長に恋するまで

課長と資料室

 終業時刻一時間前に見積書が完成した。
 すぐに石上に提出した。

「一瀬、資料室からこの資料取って来い」

 ついでのように石上に頼まれた。
 メモを渡され、席を立った。

「寄り道すんなよ。見積書のダメ出しがあるからな」
「ダメ出しされるような物、作ってませんから」
「それを決めるのは俺だ。さっさと資料取って来い」

 相変わらずの暴君だ。

「はいはい、わかりましたよ。石上主任」

 大人しく言われた通りにメモを持って席を立った。
 ついでに休憩室に寄って、コーヒーを飲んで来よう。
 密かなたくらみを抱えてオフィスを出た。

 はぁ、くたびれた。
 
 夕方はちょっと眠くなる。休憩室でコーヒーを飲んでリフレッシュする。
 資料室は都合のいい事に休憩室の隣だ。
 だから、みんな資料室に行くと行って、休憩室に寄り道をする。
 適度に息を抜かなきゃ、いい仕事はできない。
 新人だった時に鈴木さんにそう言われた。
 
 さて、資料室に行くか。
 空の缶コーヒーをゴミ箱に捨てて、休憩室を出た。

 気を抜いたまま資料室のドアを開けて、心臓が縮んだ。
  
 上村課長がいた。
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