課長に恋するまで
課長は机の前に座って、分厚いファイルを読んでいた。
他の社員はいないようだった。
「失礼します」
そう声をかけると、課長はこちらに一度だけ視線を向け、静かに頷いた。そしてすぐにファイルに戻り、熱心に読み始めた。
邪魔にならないようにそっと、棚の方に行った。
二十帖ほどの広さの部屋には天井まで高さがある棚がずらりと並んでいた。その棚にはファイルやら、書物やら、辞書やら、年鑑などが並んでいる。
石上に頼まれたのはファイル三冊と、国際条約の本だった。
ファイルは手の届く位置にあったけど、国際条約の本は届かない所にあった。
梯子は課長がいる机の側にあって、取りに行くのは少々、気が引ける。
本はちょっと頑張れば届きそうだ。
背伸びしてトライしてみる。
惜しい。後二センチ、いや、一センチで届く。
もう少し、もう少し……。
あっ。
後ろから突然、手が伸びた。
他の社員はいないようだった。
「失礼します」
そう声をかけると、課長はこちらに一度だけ視線を向け、静かに頷いた。そしてすぐにファイルに戻り、熱心に読み始めた。
邪魔にならないようにそっと、棚の方に行った。
二十帖ほどの広さの部屋には天井まで高さがある棚がずらりと並んでいた。その棚にはファイルやら、書物やら、辞書やら、年鑑などが並んでいる。
石上に頼まれたのはファイル三冊と、国際条約の本だった。
ファイルは手の届く位置にあったけど、国際条約の本は届かない所にあった。
梯子は課長がいる机の側にあって、取りに行くのは少々、気が引ける。
本はちょっと頑張れば届きそうだ。
背伸びしてトライしてみる。
惜しい。後二センチ、いや、一センチで届く。
もう少し、もう少し……。
あっ。
後ろから突然、手が伸びた。