課長に恋するまで
 課長は本を渡すと、また元の机に戻ってファイルを読み始めた。
 その姿を棚の間からそっと覗き見る。

 鼻筋の通った綺麗な横顔。

 頬杖をついて資料を読む、伏し目がちな表情は色気がある。
 すっきりとした顎から首筋のラインも美しい。

 ずっと課長を見ていたい。
 そんな衝動にかられた。

「何か用ですか?」

 ファイルの方を見たまま、課長に言われた。

 ドキッとした。

 抱えていたファイルと本を床に落とした。

 バサバサッと大きな音が響いた。

 やっちゃった。
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