課長に恋するまで
出世なんて興味はなかったが、子どもたちが手を離れた事が誘いに乗った切っ掛けだった。
妻を亡くして十九年が経つ。
再婚もせず、子ども中心で生きてきた。
そして今年の春、19になる下の子が、仕立て屋修行の為、イギリスに行ってしまった。
親としての仕事はもうほとんど終わったと言ってもいい。
だから東京に行く事にした。
「上村、やっと来たか」
クラブに行くと、香川が待ち構えていたとばかりに言った。
同じテーブルには三十代ぐらいの、品のいい着物美人がいた。
「このクラブの香織ママだ」
香川が紹介してくれる。
「香織です。どうぞご贔屓に」
香織ママと名刺を交換した。
「上村さん、お飲み物は何にします?」
香織ママに聞かれ、香川と同じウィスキーにした。
慣れた仕草で香織ママがウィスキーを作ってくれる。
恐縮しながら受け取り、香川と乾杯した。
それから二十代ぐらいの子たちが、二人、テーブルに付いた。
みんな上品な感じのする子たちだ。
彼女たちとも名刺交換した。ゆかりちゃんと、えりちゃんという名前だった。
香川に今度二人で飲みに行こうと言われていたが、まさかこんな高級クラブで飲む事になるとは思わなかった。
香川は本当に出世したんだなと、しみじみと感じる。
妻を亡くして十九年が経つ。
再婚もせず、子ども中心で生きてきた。
そして今年の春、19になる下の子が、仕立て屋修行の為、イギリスに行ってしまった。
親としての仕事はもうほとんど終わったと言ってもいい。
だから東京に行く事にした。
「上村、やっと来たか」
クラブに行くと、香川が待ち構えていたとばかりに言った。
同じテーブルには三十代ぐらいの、品のいい着物美人がいた。
「このクラブの香織ママだ」
香川が紹介してくれる。
「香織です。どうぞご贔屓に」
香織ママと名刺を交換した。
「上村さん、お飲み物は何にします?」
香織ママに聞かれ、香川と同じウィスキーにした。
慣れた仕草で香織ママがウィスキーを作ってくれる。
恐縮しながら受け取り、香川と乾杯した。
それから二十代ぐらいの子たちが、二人、テーブルに付いた。
みんな上品な感じのする子たちだ。
彼女たちとも名刺交換した。ゆかりちゃんと、えりちゃんという名前だった。
香川に今度二人で飲みに行こうと言われていたが、まさかこんな高級クラブで飲む事になるとは思わなかった。
香川は本当に出世したんだなと、しみじみと感じる。