課長に恋するまで
「課長、次は日本酒行きましょうよ」

 石上君に言われて、メニューから店主おすすめの純米大吟醸を選んだ。

「熱燗にしますか?それとも冷酒のままいきますか?」

 石上君に聞かれた。

「石上君は普段、日本酒はそれほど飲みませんね」
「なんでわかるんですか?」
「大吟醸を熱燗にするなんてもったいないと思わないからですよ」
「えぇ、そうなんですか」

 石上君が切れ長の目を大袈裟に見開いた。

「熱燗にしてしまうと、風味が飛んでしまうんですよ。いいお酒はそのまま飲むのが一番美味しい飲み方です」
「なるほど。課長、勉強になります」

 石上君が感心するように頷いた。

「では、冷酒で頼んできます」

 石上君が席を立ち、注文しに一階に行った。

 一瀬君と二人きりになる。
< 82 / 247 >

この作品をシェア

pagetop