課長に恋するまで
「上村さん!来てくれて嬉しいです!」

 店に入るとゆかりちゃんが出迎えてくれた。
 今夜は石上君と、取引先の大東亜産業の忘年会に参加した。そこで三田部長に銀座のクラブに行ってみたいと言われたのだ。
 
 現在進行中のプロジェクトを円滑に進める為に、三田部長とは親密な関係を作っておく必要があった。
 
 三田部長と石上君と僕の三人で香川専務に連れて来てもらった香織ママの店に行った。
 店に行く前に接待で伺う事を連絡しておいたので席も確保してもらっていた。
 
 店はこの間よりも賑わっていた。
 
 よく見ると、芸能人や、大手企業の社長の顔などがちらほらと見えた。
 石上君がうっかり声をかけないようにそっと注意をする。
 
 こういう場所ではマナーが大切なのだ。いくら有名人に会ってもママの許可がなければ声は掛けてはいけない。
 気持ちよく飲む為のルールである。

「上村さん、いらっしゃいませ」

 香織ママがテーブルに来てくれた。
 今夜は黒いドレス姿で、一段と美しく見える。

「香織ママ、突然すみません。席を取っておいてもらえて助かります」
「こちらこそ、また来て頂けて嬉しいです」

 香織ママが上品な笑顔を浮かべた。

「香織ママ、こちらは大東亜産業の三田部長です」 

 香織ママに三田部長を紹介した。

 三田部長は香織ママと話した途端ご機嫌になる。

 それからこの間と同じく、ゆかりちゃんとえりちゃんがテーブルに付いてくれた。

 石上君が緊張した様子でゆかりちゃんとえりちゃんと名刺交換をしていた。
 銀座のクラブは初めてらしい。
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