課長に恋するまで
 シャンパンで乾杯すると、和やかな雰囲気で飲み始めた。

「銀座のクラブは敷居が高くて、来る勇気がなかったんですよ。さすが上村さんですね。いい所をご存じだ」

 三田部長が褒めてくれる。

「いえ、うちの香川がこちらの常連でして」
「香川専務ですか。お名前は聞いてます。やり手だそうで。確かゴルフがお好きだとか」
「えぇ、プロになる事も考えたぐらい好きらしいですよ。三田さんもおやりになると石上から聞きましたが」
「お恥ずかしい。始めたばかりなんで、まだ回る程の腕ではありませんよ」
「ご謙遜を。是非、香川も入れてゴルフに行きましょう」
「三友商事の専務さんが私みたいな素人と回って下さるんですか?」
「三田さんとは今後も長いお付き合いをしたいと思っておりますから」
「上村さん、嬉しい事を言ってくれますね」

 嬉しそうに三田部長がシャンパンを飲んだ。

 それからウィスキーを飲んで、二時間談笑してお開きになった。
 
 三田部長をお見送りしてから、ゆかりちゃんとアフターに付き合う事になっていた。
 アフターとはクラブが閉店した後に店の外に出て食事に行ったり、飲みに行ったりする事だ。
 石上君も一緒にと思っていたが、顔色が一段と悪くなっている。

「課長、すみません。お先に失礼します」

 無理に引き留める事もできず、石上君も帰って行った。

 今日は金曜日だ。土日で回復するだろう。
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