課長に恋するまで
「上村さん、お待たせ」
 
 エレベーターの前で待っているとゆかりちゃんが現れた。
 Aラインの白いコートを着ていた。

「お姫様、どこに行きますか?」

 ゆかりゃんが嬉しそうな笑顔を浮かべた。

「お腹すいちゃった。お寿司が食べたいです」
「かしこまりました」

 ゆかりちゃんと腕を組んでエレベーターに乗った。
 今夜はゆかりちゃんのおかげで接待は上手く行った。
 この忙しい時期に席を確保できたのはゆかりちゃんが香織ママに交渉してくれたおかげだ。
 だから、ゆかりちゃんの気の済むまで付き合うつもりだ。

 タクシーで銀座七丁目まで移動して、ゆかりちゃんお勧めのすし屋に行った。そこは深夜から営業するアフター向けのすし屋らしい事をゆかりちゃんが教えてくれた。
 立派な檜のカウンターがあり、客席は二十程あって半分以上埋まっている。

「大将、こんばんは」

 ゆかりちゃんがカウンターの奥の生真面目そうな大将に声をかけた。
 コの字型のカウンターの中は大将と、もう一人の職人が寿司を握っている。

「ゆかりちゃん、いらっしゃい」

 大将が威勢よく応えた。
 ゆかりちゃんと奥のカウンター席に座り、メニューを見た。
 寿司の値段は全て時価と書いてある。さすが銀座だ。
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