扇くん、要注意報!
「はぁっ、はっ...あり、がと」
「どーいたしまして」
お水は半分半分、少し経った頃には水滴しか残っていなかった。
まさか前の席の男の子とこんな風に全力で走って逃げて、ペットボトルひとつ挟んだ距離にいるだなんて。
もともと走りが激遅なのにくわえて、震えのせいか足がもつれてしまって、意外としぶといヤンキーくんに追いつかれては離れてを長い時間繰り返していた。
ひそひそ、ひそひそ...
うわあ、すっごい見られてる〜...
特攻服着た男が女子高生とスイーツ街なんて浮くに決まってるよなあ。
パフェ、アイス、ケーキ。たくさんの甘いものと女の子が私たちの周りを囲んでいる。
居心地の悪い私は気を紛らわすようにきょろきょろとカラフルなお店を見るけれど、隣の彼は別の意味で見ているらしい。
「はっ!なるほど!そういうことか!」
「どういうこと?...てか、声でか」
「扇くんはここで待ってて!」