扇くん、要注意報!
なにいってんだ、みたいな顔をする扇くんに手を振って走り出す。
私は咲の言葉を思い出しながら扇くんへのお礼を買うことにした。
...えっと、確かここら辺のケーキ屋さんだったはず。
咲に「美味しいケーキ屋さんがある」って話を聞いたことがある。一口サイズの箱入りケーキがとっても人気らしい。
うん、きっと扇くんも気に入る!
もう不思議と震えない。スキップなんて楽勝ってくらい。
「───ただいま~.....ん?!」
ほんの少し前まで制服のポケットで暖をとっていた私は寒さを忘れていた。
好きそうなものを独断と偏見で選んで、元の場所に帰ったのだけれど。
変わらずベンチに座っていた扇くんの横には、今私が手に持っている淡い水色の箱がちょこんと置いてある。
...あんなかわいいもの、持ってた?のか?
「...ふ」
困惑する私を前に、彼は初めて笑いをこぼした。
冬の息が笑みとともに空気を白く染める。
私はなんだかそれがゆっくり遅く、スローモーションに見えたような気がした。