扇くん、要注意報!

「みーつけた〜」



ゾワリと背筋を嫌な感覚で撫でられるように、低い声は私に向けて聞こえてきた。



振り返って目に入ったのはいつかのあのヤンキー君。それと名前も顔すら知らない三人。



まだ発せられていない言葉を予知できてしまう。



「あの日のお礼しにきたんだけど、場所変えような」



門を背に肩を掴まれた私は予知した通りの言葉を無視して、胸のあたりに向けて思いっきり突き飛ばす。



ですよね!効かないですよね!



運良くヤンキー君の右足が一歩分下がった。その隙に学校まで走ろうとしたけれど、追っ手が数人。



周りの生徒は新入生歓迎会の準備中。



今日までたくさん頑張ったであろう小道具や手作りの看板が目に入って、咄嗟に方向を変えた。



宝石みたいにキラキラ綺麗な姿、おしとやかで和やか。ショートケーキが世界一似合う。



私の“お姫様”のイメージはこんなもの。



髪はボサボサ、制服がよれていても気にする余裕が持てないし、おまけに泣きそうで顔が歪んでいる。



ああ、こんなお姫様他にいないよ...
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