扇くん、要注意報!
はじまりはじまり
「お願い!あの人の所に行きたいの!」
「駄目よ!あの国の王子様は、誰にも興味を示さない、それはそれは冷たい人間なの。貴方には似合わない!」
────数十分前、鏡の前には思い描いていたお姫様が立っていた。
それでも気が気でないのはあの場所に扇くんを置いていってしまったから。
...誰よりも強いってわかってるけど、もし相手が武器を持ってたら?
劇中に使う小道具のナイフを見つめると、ますます不安が募る。
あ、先生に言って...
「苺!扇くん発見!今ステージの奥にいる!」
「あ、え、ほんと!?」
体育館袖から顔を出そうとすると、ティアラが崩れると咲に怒られて大人しくギコギコ鳴る椅子に座った。
そっか、そっかあ
やっぱりね、扇くんは誰にも負けないんだから。
誇らしげに、偉そうにふふんと静かに笑って見せた。
くじ引きで決まった順番はあやふやだけれど、私たちの前のクラスは把握済み。
なんかやる気いっぱい出てきた...!
私は、扇くんが学校に行きたくなるくらいの気持ちをあげたい。