扇くん、要注意報!
「────はい、じゃあ主役は仁科 苺(にしな いちご)で決定」
ほらだから!見つかっちゃうんだってば!聞いてるか、扇 火花〜!!!!!
あみだくじでもジャンケンでもなく先生の目に映った私は、二ヶ月後に控える新入生歓迎会での劇で主役を任された。
毎年劇枠は、学校一番の注目を集めるらしい。
何人?何人来るんだ?わたしのドレス姿を何人の観客が見に来るの...!?
「はぁ~...お姫様なんて、綺麗な子がやるもんでしょ...」
「まあまあ、苺は可愛いからなんとかなるって!ファーイト!」
ひねくれて突っ伏すと隣の席の友人、咲(さく)が適当に慰めを入れた。
可愛い、元気の二つで苺を表わせる、いわば単純女だといわれる。
褒め言葉にも貶し言葉にも聞こえるのがふしぎ。
また黒板とぶつかるチョークの音がして顔を上げると、白い粉は私の隣にナニカを書いた。
“王子役:扇 火花”
「仁科さん、練習のまえに扇君のこと、連れ戻してきてね」
.....たぶん、あれだ。
先生は首寝違えてて、右側のほうしか向けなかった。結果、私と扇くんを見つけたんだ。
運で片付けるには重すぎる。