扇くん、要注意報!

「────はい、じゃあ主役は仁科 苺(にしな いちご)で決定」



ほらだから!見つかっちゃうんだってば!聞いてるか、扇 火花〜!!!!!



あみだくじでもジャンケンでもなく先生の目に映った私は、二ヶ月後に控える新入生歓迎会での劇で主役を任された。



毎年劇枠は、学校一番の注目を集めるらしい。



何人?何人来るんだ?わたしのドレス姿を何人の観客が見に来るの...!?



「はぁ~...お姫様なんて、綺麗な子がやるもんでしょ...」


「まあまあ、苺は可愛いからなんとかなるって!ファーイト!」



ひねくれて突っ伏すと隣の席の友人、咲(さく)が適当に慰めを入れた。



可愛い、元気の二つで苺を表わせる、いわば単純女だといわれる。



褒め言葉にも貶し言葉にも聞こえるのがふしぎ。



また黒板とぶつかるチョークの音がして顔を上げると、白い粉は私の隣にナニカを書いた。



“王子役:扇 火花”



「仁科さん、練習のまえに扇君のこと、連れ戻してきてね」



.....たぶん、あれだ。



先生は首寝違えてて、右側のほうしか向けなかった。結果、私と扇くんを見つけたんだ。



運で片付けるには重すぎる。
< 2 / 25 >

この作品をシェア

pagetop