扇くん、要注意報!
胸が弾み、振り返ってまた大きく跳ねた。
センターで分けた前髪に、整った顔のパーツ、いつもより柔らかい微笑みで弧を描く。
夢、ですか?
だって一番苦手でしょ?
煌びやかな衣装で、光が集まる舞台の上。そんな一番苦手なはずの場所に───扇くんがいる
「扇く......お、王子様!どうしてここに...」
「約束の時間になっても姿が見えず、迎えに行こうとしていたんだ。
立ち聞きなど趣味の悪いことをしたこと、謝る」
ヤンキー君たちは?怪我してない?
名前を呼んでしまいそうになるけれど、いつもの調子で「おい次」と小声が聞こえて台本のラスト1ページの部分を口に出す。
そうすると、彼は私の前で膝まづき、よくあるお話のように手の甲にキスをした。
...き、き、す?
本当にやるなんて思ってもみなかった私は、観客の歓声とは裏腹に「ひえ」なんて小さい情けない声を出し、厚めのお化粧をしていてもわかるほど赤くなっている。
だって熱い、手の甲も顔も。なんだか「好き」って声に出したくなる。