扇くん、要注意報!
こつん
「ん...?んわあ!」
「こら、声おさえろっての」
こんなに暗い舞台袖なのに、扇くんのまわりだけ光って見える。
雰囲気の違った格好もそうだし、なにより学校に好きな人がいるってこんなにも幸せなんだって初めて知った。
私に合わせて少しかがむ仕草だけで胸がキュンと弾む。
「終わったらすぐ俺んとこ集合」
「...御意?」
「ふ、いつの時代。...成功させんぞ、苺」
「っうん!火花!」
───なんて、気合い十分だったのはつかの間。
王子様のもとへ走って元気いっぱいに飛びつくのだけれど、勢い余りすぎて激突。
本日二度目の情けない声が漏れたと同時に、扇くんのほうに倒れ込んだ。
演出か、アクシデントか。
体育館全体からそんなざわつきを感じても、どうすることも出来ず頭は真っ白。むしろ透明。
なにしろ私を庇うようにして倒れた彼の形相を想像するだけで怖い。
もう、なにも無かったみたいに立つしか...
「顔を上げて、姫」
「は、い...」