扇くん、要注意報!

手渡した紙袋には、学校帰りに買った色とりどりのマカロンが入っている。



担任の先生によると、甘いものには目がないらしい。食べ物で釣れ、と二千円持たされたのだ。



お菓子を渡したくらいで交渉が上手くいくなんて思ってないけど...



「で?君の用は?告白でもしに来たのかな?」


「違います!」



にま、と笑顔を浮かべた柔らかい表情と着ている服がまるで不釣り合い。



もしかして今着てるってことは、これから喧嘩しにいくの...?



私だっていつ標的にされるかわからない。この日のために、防犯ブザー、受け身の練習はカンペキだ。



「手短にドーゾ」


「私の王子様になってください!」


「うんやっぱ手短じゃなくていいや」



劇のタイトルは“苺姫”。まあそのままの意味。



王子様は最後のシーンしか出ないという、扇くんにとって最大の魅力。



噂は最悪な優しい王子様に会いに行く途中、色んな人と出会って引き止められて、それでも王子様を信じてお城へと進むお話。
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