扇くん、要注意報!
友情もそれ以上も、たくさんのものをこの高校で得られますように
そんな意味を込めた劇になっているらしい。
キスシーン付きだけれど、フリだから何も心配いらないし、突っ立ってセリフだけ言えば大成功!
...案の定、扇くんの返事は「ぜってえやだ」だっただけれど。
「一応俺、族なんだよ。キャスティング大はずれ、掠ってもねえ」
「え、え、だめ!王子様は扇くんしかいないよ!優しいもん!」
「...優しい?はは、笑わせる」
全然笑ってないが!?
乾いた笑いを見せてから、私との距離を一歩つめる。
引いたら負けな気がして、扇くんから目を逸らさずにいた。
優しくなくても、こんなに綺麗な瞳になるの?
すっと手が伸びて、細長い指を私の顎に引っ掛ける。それから、かかんだ背で私を見つめ、からかうように笑った。
「ちょ、と、なんですか!」
「背ちっせえ」
「初対面で結構悪口!そうじゃなくて、私は扇くんと...」
「───俺のそばにいたら、穢れちゃうよ?」
...うん、だめかもしれない。
君に触れたら、知らなかった気持ちを覚えてしまいそうで。