扇くん、要注意報!
鬼ごっこ
『───あ、火花みっけ。集会始まるよ、総長いないと締まらない.....って、お友達?』
『どこかの国のお姫さま。じゃ、王子様探し頑張ってね』
あの後すぐ、同じ服をまとった優しげな男の人が扇くんを探しにきたのを合図に勧誘は打ち切り。
はっきりNOと言われてしまえば、どうすることもできない。
実際、準備も始まったばかりだから、今から王子様役を決めたっていいのだ。
...でも、でも。
「扇くん!見てください、衣装の下書きが出来上がりました!ほら、お菓子がちりばめられてて...」
「喧嘩させて?」
やっぱり私は扇くんがいい。
昨日夢をみたの。
クラスメイトと扇くんが仲良く喋ってるとこ、休み時間が終わって、当たり前みたいに私の前に座る。
何気ないものだけど。
そんなの絶対、楽しいもん...!
薄暗く照らされている長身の時計は、18時を回ったところだった。
三月は春の部類に入るんだと思っていたけれど、まだ制服の上にコートは欠かせない。
対する彼は、相変わらずあの特攻服。