扇くん、要注意報!
でも、それよりももっと怖いもの。
「おい出てくんならいっぺんにしろ、義務教育だろうが。それともなに?姫さん連れてく悪役?」
「...扇くん義務教育受けたの?」
「姫さんうるさい」
下手したらお化けと同レベル。
人質だと脅す誰かさんより、扇くんが怖いと思った。
もっといえば、私が扇くんを信じているから怖くないってことになる。
強いから当然だけど、なんとなく私を見捨てるような人じゃないってわかるから。
「立って」
だから私もさ、ぎゅって手を握って引っ張りあげてくれたみたいに、返してあげたいなって。
今ヤンキー君が踏んでいる、扇くん用に持ってきた歓迎会のチラシを力いっぱい引いて転ばせるとか。
よいこは真似しちゃだめだよ
ドン!
「ってえなぁ!?おい、てめえ!」
見事に思い描いていた通りに転んでくれて、しりもちをついたヤンキー君。
震えるくらいの怒鳴り声で逃げようにも足が動かない。それでも、やらなきゃ良かったとは思っていなかったり。
「手」
「...うん!!」
ぶっきらぼうでも優しい声音。存外あったかい大きな手の上に乗せると、強く握って先を走った。