星の降る夜、音のない世界で、君の声を

えっと……どこだっけ。淡い藍色のチェックのズボンに上は白のシャツ、同じ藍色のチェックのネクタイは緩められて、飾り程度にぶら下がっている。

確か、隣町の私立高校の制服だと思うが、自信はない。私は制服につけていた『戸田』の名札を外してポケットに入れた。とりあえず、私と同じ学校でないことにほっとする。夜に一人公園でコンビニ弁当を食べてる自分を、同じ学校の子には、絶対知られたくない。

そこまで考えてから、小さくため息が、(こぼ)れた。ほんと、私はちっぽけなプライドしか持ってない、ちっぽけな人間だ。

「何?座りたきゃ座れば?」 

私の影に気づいたのか、ぶっきらぼうな声がなげかけられた。

柔らかそうな黒髪を夜風に靡かせながら、膝に広げた本から視線を上げずに、彼は声を発した。長めの前髪で顔は、よくわからない。彼はこちらを見ようとよせずに手元の本のページを捲った。

その行動、表情ひとつとっても、愛想の欠片もない。別に愛想良くして欲しい訳では勿論なかったが、座りたかったベンチを先に越されたことに、むしゃくしゃした。

ーーーー()感じ。

私の彼への第一印象だった。
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