星の降る夜、音のない世界で、君の声を
「失礼、します」 

彼に聞こえる程度の小声で一応、相席の礼儀を済ませて、人一人分のスペースを空けて、彼から見て右側に腰を下ろした。

彼からの返事はない。

彼の足元には、すでに食べ終わったコンビニ弁当が、ビニール袋に雑に突っ込まれていた。

私は、コンビニ弁当の蓋をそっと開けた。こちらに全く興味がないのか、夢中で手元の本のページをめくり続ける彼を横目に、割り箸を割る。


一口食べようとしたその時だった。


「マジで。女子が、にんにくたっぷりの焼肉弁当かよ」

ぷっとこちらを揶揄うように笑った彼は、ようやくコチラを向いた。突然話しかけられた言葉が、そんな馬鹿にしたような言葉で、私は腹が立った。

「あなっ……」

あなたに関係ないでしょ、と言いたかった私は、思わず口をつぐんでいた。

長めの前髪から、綺麗な二重瞼がこちらを除いていたから。鼻は一本の筋のように真っ直ぐ通り、形の良い薄い唇が口角を上げていた。

(綺麗な顔……)

思わず、見惚(みと)れていた。
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