僕の素顔を君に捧ぐ
優花、クビの危機
如月のタイムスケジュールは、日に日に忙しくなり、あわせて優花の仕事も徐々に分量を増し、勤務時間も不規則に、長くなりつつあった。
睡眠時間は削られ、帰宅して枕に顔を付けると、愛読書を開く間もなく眠りに落ちてしまう日々に突入した。
ある時、撮影から戻った如月が書斎でエッセイを執筆していたので、ココアを用意した。
ノックしても返事がないので、そっと覗くとパソコンの前でつっぷして寝てしまっていた。
(どうしよう。起こすべきか、寝かせるべきか)
果たして地雷は、どちらに仕掛けられているのか…。
優花は机にココアを置き、なんとなく自然に目が覚めた、という体にするため、そっと肩をつついてから、ささっと後ずさった。
「うーん」
如月は、あどけない声を漏らして顔の向きを変え、また寝入ってしまった。
仕方なく毛布を運び、肩から掛けた。
手元には久々に見る、国語辞典が開いて置かれている。真面目な人なんだな…と、その横顔を見つめた。
思いのほか可愛い寝顔に、きゅんとなってしまう。