僕の素顔を君に捧ぐ
終章
脱出作戦!
数日後、朝食の準備をしていると、寝室から如月が電話で話す声が聞こえた。
朝早くから何があったのだろうと、ダイニングにやってきた如月の顔をうかがうと、如月は眉根を寄せてため息をついた。
「撮られた」
差し出したスマホの画面に、埋葬手続きを行って役所を出る如月と優花の姿が映っていた。
「事務所にも極秘で入籍」と大きなタイトルが目に飛び込んだ。
優花は驚きのあまり息をするのを忘れ、背中に冷や汗が流れるのを感じた。
「よくもまあこんなでたらめを」
如月は呆れたように言った。
「如月さん…申し訳ありません」
「いや、君は悪くない。ただ、もうマンションの前は報道陣の人だかりだそうだ。一時間後の撮影だけは、穴をあけたくない。クランクアップなんだ」
「出られませんね…そうだ、ちょっと考えがあります」
優花は大川社長に電話を入れた。
「こっちも袴田副社長と話してたところよ」
大川社長もすでに状況を把握済みで、困った様子だった。
優花は自分の考えを話した。
「…オーケー、その優花の作戦で行こう」
「本当にすみません、この責任は…」
「なにバカ言ってんの。自分を責めるんじゃないよ」
大川社長は鼻で笑って電話を切った。