僕の素顔を君に捧ぐ
「お部屋はとてもきれいにされていますので、栄養管理を重点的に行えばいいでしょうか」
優花が尋ねると、如月は眉根を寄せ、優花を見下ろして言った。
「家事全般、重点的にやるに決まってるだろう。…あんた、死ぬ気で仕事してないだろ」
「え? 死ぬ…気?」
突然の極端な質問に、優花は目を白黒させて後ずさった。
「いいえ!もちろん、精一杯努めます」
慌てる優花に冷ややかな視線を投げる如月を、袴田が制した。
「おい琉星、その言い方はないだろう。ちゃんと説明しないと、百瀬さん困るだろ。しょうがないなあ。俺が説明するよ」
と言った。
「如月は本来、自分で家事もこなす完璧主義者なんだよ。でも、今後は仕事がかなり忙しくなる。ドラマの撮影が佳境に入るのに、同時進行でエッセイも書いててさ。執筆にゴーストライターやインタビュアーを使わないで、自分で書くっていうんだ。半年後にはミュージカルがあって、ダンスのレッスンもあるっていうのに」
「それで、家の中のこと一切、手が回らなくなると言うことですね」
優花は片手で犬を撫でてなだめながら、袴田の話に頷いた。
「大変だって時に、長年付いてるマネージャーが急病で長期休暇に入っちゃって…。そのマネージャーは家の中のことも少しやれたんだけど、代打の新人マネージャーはその犬に嫌われて家にすら入れなくてさ」
袴田は困ったように眉の端を下げて笑った。
「百瀬ちゃん、頼むよ」