初めては好きな人と。
「そ、それって…、同棲ってこと…?」
「まぁ、言い換えればそうだね」

 そんな、展開が早すぎて心がついていけない。

「それとも、美月は俺と暮らすの、いや?」

 きゅうん。

 飼い主に怒られた犬みたいにシュンと悲しそうにそう言う護に胸が締め付けられた。

「嫌なわけない!」
「じゃぁ、決まりだね。とりあえず必要なものは柿田さんに頼んであるから、もう少し落ち着いたらアパートに荷物を取りに行こう」

 そして、護は私の手からマグカップを奪い取ってテーブルに置く。

「こぼすと危ないから」
「え?あ、うん?」
「ねぇ、美月…、今さらだけど、俺に触られるのは平気?怖くない?」
「うん、平気だよ。だって護だもの」

 平気などころか、安心材料でしかない。
 その返事に安堵の表情を浮かべて、護は私の手を握った。

「嫌ならちゃんと言ってね」

 何を、と聞き返そうとした私の口は、護によって塞がれる。
 二度目のキスは、少し長めに。そして離れたかと思えば、角度を変えて再び口づけられた。

「ん、…」

 護の手が、首筋を支えるように這うその感覚に体がビクリと跳ねてしまい、同時に引っ込められた。

「ご、ごめん、調子乗った」
「ちが…、今のは、その、怖くてとかじゃなくて…えっと、」

 体が勝手に反応しただなんて言えない!

「首、弱いの?」
「や…ぁ」

 護の指が、そっと首筋をなぞる。私の意図に反して、私の口からは自分の声とは思えない甘美な声が漏れた。

「かわいい、美月」
「ま、まもる…んん、っ」

 恥ずかしさのあまり助けを求めたのに、今度は深いキスが落とされた。護の熱を帯びた舌が、私の口をこじ開けて差し込まれる。ねっとりとした舌は明確な意思を持って私の舌を追いかける。絡まる舌と舌。その度に、体の芯が快楽に震えた。
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