初めては好きな人と。

 目が覚めて起きると部屋は薄暗く、窓の外は真っ暗で飛び起きる。

「やだ、寝すぎちゃった」

 最近、せめてものお礼に、と食事の用意を買って出ていた。
 慌ててリビングに行くと予想に反して人気はなく、電気もついていない。まだ仕事なのかと、仕事部屋をノックするも返答がなかった。玄関にも靴が無い。
 珍しく、出かけているみたいだった。

「もしかして、外に食べに行ったとか…?」

 スマホをチェックするも、メッセージや着信は無かった。

「あ、洗濯物入れないと」

 リビングの窓の外に干したままの洗濯物が視界に入り、私は外へ出ると、久しぶりに吸う外の空気の冷たさにさっきまでぼうっとしていた頭がすっきりしていく。

「きもちいいー」

 そろそろ、外にも出ないと、カビが生えちゃうかも。

 ベランダに両腕を乗せて、なんとなく景色を眺めてたとき、道路を挟んだ反対側のコンビニから出てくる二人組が目に入った。

「え…うそ…」

 コンビニの明かりに照らされた二人は護と柿田さんで、信じられないことに腕を組んで歩いていた。二人とも、今朝と同じ服装だったからすぐにわかった。

 柿田さんは、護の腕を掴んで右手にはコンビニの袋を下げている。
 傍から見れば、すごくお似合いの美男美女カップルにしか見えない。

 どういうことなの…?
 二人は、どういう関係?

 護が、誰かを裏切ったり傷つけるような人じゃないのは、私は良く知っている。

 でも、わからない…、護のことがわからない。

 つぎからつぎへと疑問が浮かんできて、心がどんよりとした雲に覆いつくされていく。
 私は急いで洗濯物を取り込むと、二人が戻ってくる前にまた寝室に戻った。
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