初めては好きな人と。
7
昨日は結局泣きつかれて眠り込んでしまったらしく、朝目が覚めると護の寝顔が目の前にあった。腕が私の背中に回されて抱きしめられているせいで身動きが取れない。
とても綺麗な寝顔。
女の私が見てもため息がでるくらい整っている容姿の護は、線が細いからこうして目を閉じているとまるで女性みたいな美しさがあった。
「大好き」
寝ているのを良いことに、そう呟いて護のスウェットに顔をうずめれば、いつもの護の匂いに包まれてほっとする。
「んー、俺も、大好き」
不意に、声が降ってきたと思えば、護の腕がぎゅうっと私をきつく抱きすくめた。
心臓が鷲づかみにされるような苦しさに襲われ、涙がこみ上げてきた。
私はそれを必死に抑え込む。
私は、どうにか笑顔を顔に浮かべて、護に言う。
「護、私、もう一人でも大丈夫だから、会社行って良いよ?」
「え…でも、」
「私もね、家に引きこもってばかりじゃ体力も落ちちゃうし、気分転換に散歩行ったり買い物行ったりしようかなぁって思ってたの。だから、護も会社行って?」
難色を示した護だったけれど、私のお願いコールに渋々出社していった。
護を見送った後、朝食の食器を洗って拭いて片づけて、洗濯が終わった衣類をベランダに干して、部屋に掃除機をかける。手を止めることなく、ひたすら働いて家の中を綺麗にした。
余計なことを考えたくなかった。
一通り綺麗にした頃には、お昼を過ぎていて、私はスマホで検索した近所にあるカフェに出かける。一人で外出するのは、本当に久しぶりで、ちょっとドキドキしたけれど、昼間ということもあり思っていたよりも大丈夫で安心した。
食事を済ませた後、なんとなく周辺を散策してみようと思い立ち、あてもなく歩を進めていると、教会のような建物が目に止まった。煉瓦の塀に囲まれた教会の敷地内は木々が生い茂り、門から続く道沿いには手入れされた草花が植えられている。
「綺麗…」
都会の中ということを忘れるほど情緒的で、私は引き込まれるように足を踏み入れていた。