初めては好きな人と。

「す、すみません、こんな話…初対面の方に…」
「いいえ、辛いお気持ちを話してくださって、ありがとうございました」

 涙も止まり、私が落ち着いたころを見計らって、女性は私に言った。

「あなたは、どうしたいのでしょうか?」
「わたし、ですか…?」
「えぇ、あなたが相手のことを思いやる気持ちはとても素晴らしいと思います。ですが、これは、あなたの人生。人は生まれながらにして平等であり、出自や育ち、財力、地位、権力など関係ないのです。答えを見つけるためには、まずあなたがどうしたいかを、自身に問いかけてみてください」

 それに、と女性は続ける。

「お相手の方も意志を持った一人の人間です。その方はきっと、あなたのそばにいたいからそばにいてくれるのだと私は思います。あなたのそばにいる、という選択をしたのは、間違いなくその方の意志でしょう?」

 言われてハッとして、私は女性の顔を仰ぎ見る。
 彼女は、にっこりと笑みを浮かべてこくりと頷いて見せた。

「きっと、お相手の方は、あなた自身も気づけていないあなたの魅力をたくさん知っているんでしょうね」


 お礼を言って教会を後にする私に、女性は「神のご加護があらんことを」と祈りの言葉をくれた。すっかり話し込んでしまい、外に出ると日は傾き薄暗くなっていて、私は来た道を足早に戻り帰宅した。


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