あの頃からあなただけが好きでした
始めはクラスが違うから、授業の前の小テスト
情報だった。
私が出る範囲を教えて、彼がお礼を言う。
別の日には反対に、彼から情報を得て、私がお礼を言った。
その内にクラスの担任だったり、クラスメート
の話になり。
最近ではお互いの嗜好の話も話題に出るように
なってきた。
図書室の貸し出しの手続きが面倒くさいな、と彼が愚痴って私は驚いた。
本当に我ながら失礼な話なんだけど、彼の派手な見た目から、読書をするイメージがなかったのだ。
「そんな難しい本は読まないよ、ミステリーとかだけどさ。
あの図書室の雰囲気が好きで。
……オーブリー嬢は何読むの?」
「私は詩集が好きなの」
好きな詩人の名前をあげた。
「……ごめん、わからないな」
無理もない。
有名な詩集も出さずに何十年も前に亡くなった
詩人だ。
今では誰の口にものぼらない、記憶にも残って
いないだろうその名前を、カーティスが知って
いるとは思っていない。