あの頃からあなただけが好きでした

「そうです、王都に来ているか確認はしていません。
 ……この後、マリオンをお借りしてもよろしいですか?」

「ダメですね。
 恋人が居ない間にふたりだけで会う、なんて見過ごせませんね。
 さっきも彼女に話していたんですが、神様に
顔向け出来ないような恥ずかしい真似はするべきではない、ですね」


 借りるとか、ダメだとか。
 私の事なのに、本人を挟んで頭越しに会話をするスコットとカーティスに苛々が募る。



「何のお話ですか? ブルーベルさん。
 ここでは出来ないようなお話ですか?」


 彼がマリオンと呼んだので……
 私はブルーベルさんと呼ぶ。

 すると、彼の瞳が少し悲しげに翳ったように見えた。
 どうしてそんな顔をするの……


「コーカスのご家族の話を聞きたくて、ですね」


 キーナンさんの指輪を渡されたあの夜から、会うのは初めてだった。
 ジュリアの話なら、やはりここではしたくなかった。


「わかりました、少しの時間なら」

「だったら、密室じゃなくて公園とか?
 人がいっぱい……」

 私の返事を聞いて、スコットが仕方なさそうに言いかけたが。


「もうお前は、口を出すな」

 向こう側からブレナーが、スコットに注意した。
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