あの頃からあなただけが好きでした
カーティス23歳
王都に進出すると決めたのは、キーナンの為だ。
あんな最期を迎える前、ブルーベル商会の経理の仕事をしながら、兄は王都に出た友人達と何度も会っていた。
親父は商会の店舗を構えるつもりでいたが、兄は飲食店を開きたがっていたのだ。
兄の遺体が見つかり、葬式はコーカスで行った。
ブルーベル家の現在の拠点のガーランドではなく……
嫡男の悪評から撤退した街で、親父は葬式を行った。
大きな式ではなく、本当にキーナンと親しくしていた人達だけを招いたお別れの会。
それは息子を信じきれなかった自分を、罰しているようにも見えた。
だが、俺も同じだ。
バージルの言葉に踊らされて、キーナンの足取りを調べることさえしなかった。
あんなにも身近な場所で、兄は眠っていたのに。
式に参列してくれたキーナンの友人達から、兄の夢だったレストランの話を聞いた。
レストランの開店とマリオンの事は関係なかったが、落ち着いたら。
また、会いに行こうと思っていた。