あの頃からあなただけが好きでした
「夏……何処か行くの?」
キーナンさんが姉の夏の予定を気にしているのだ、と思った。
ジュリアは手紙には書いていないのかなと思ったが、私はウチの夏の旅行の予定を答えた。
「貴方は? ブルーベルさん」
様を付けるのは却って嫌味か、と私はカーティスをさん付けで呼んだ。
彼は私を家名で呼ぶから、こちらから名前では呼べなかった。
「王都に連れていって貰う……かな?」
「いいわね! 私まだ王都行ったことないの!」
「ここと、そんなに変わらないけどなー」
裕福なブルーベル家なら何度でも王都に行けるだろうけれど、ウチでは無理だった。
夏の旅行もバカンスと言うより、ちょっと遠出したお出かけ、みたいなもの。
だから、来年の2年生で王都に行けるのを、私は首を長くして待っていた。
1年目が終わり、学校はお休みに入り、夏の休暇が始まった。
カーティスと会えなくなってから気付いてしまった。
私が姉の伝書鳩を続けたこと。
姉の恋を応援してあげたかっただけではなく。
私が、カーティスと繋がっていたいから、だった。