あの頃からあなただけが好きでした
スコット・ダウンヴィルと言う、立派な婚約間近の相手がいるなら。
もう会っても仕方がない、と自分に言い聞かせていたが。
次こそは直接彼女と話したかった。
キーナンの骨の間から見つかった、指輪……
小さな蒼い石だった。
『今の稼ぎではこれくらいだけど、この先5年毎に石を大きくして、ジュリアに渡したい』
指輪を見せてくれた時のキーナンの言葉を思い出して泣いた。
俺はもう、そんな覚悟をしていた兄の年齢を超えた。
自分でもしつこくて、みっともなくて、諦めの悪い男だとわかっているが。
マリオンが結婚しない限り、何度でも会いに行こう。
兄なら、また『カートも頑張れよ』と言ってくれる気がした。
親父はキーナンの件から一気に老け込んでしまい、経営に対して熱意を失ってしまったようで。
俺が王都に進出すると言っても、『任せる』と言っただけだ。
それは家業だけでなく、俺の結婚についてもそうなったのは俺にとっては好都合だった。
両親からは縁談を勧めてくることはなくなった。