あの頃からあなただけが好きでした

 その後、調査専門の人間を雇いクレアの周辺を調べさせた。

 調査の結果、縁談を逃れたいから、という彼女の主張は嘘なのではないか、と判断した。
 クレアは同じ職場の既婚者と深い仲になっていた。 
 愚かなふたりは、地元のガーランドで逢瀬を重ねていた。
『あぁ、それでか』と思った。



 男の名前はグレイグ・オニール。
 妻と生まれたばかりの娘がいる。
 クレアはグレイグと別れたくないのだ。

 だが、結婚は出来ない。
 それで、俺と形だけの結婚をしたいのだろう。

 既婚者との関係を続けたいのなら、せめて違う街で会え。
 グレイグの配偶者に対する気遣いはないのか。


 クレアが俺を好きなんじゃないかと思って、本気にさせないように適当にあしらっていたが。
 心配しなくても新しい恋が始まっていた。

 日陰者でもいい、と思えるなんて、大したものだ。

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