あの頃からあなただけが好きでした

 俺には人に問える倫理観はない。
 だけど、マリオンの友人のクレアには不誠実な
真似はしたくないと思っていたのだが……
 これなら、別に気遣わなくてもいいんじゃないか。


 結婚してまで協力、なんて何を言い出したんだ、と思うけれど。
 クレアが俺との契約婚なるものを欲しているのは、不倫相手と別れたくないからなら。
 適当なことを言って、乗ってみるのもいいかもしれない。



 元よりクレアとは結婚までする気はない。
 そんな事をしたら、ブルーベルの財産を引き継ぐ俺に何かあれば、それはいくら契約上の妻とは言えクレアの手に渡る。


 いや、もしかしたら本当の狙いはそっちかもしれない。
 この馬鹿馬鹿しいクレアの申し出が、グレイグに唆された話だとしたら?


 俺の為のような話しぶりだったが、クレアに対して改めて気を引き締めた。
 もうバージルの二の舞は御免だ。

 信用出来る相手は、限られている。



 俺はクレアの調査依頼と同時に、マリオンの事も頼んでいた。
 その結果も届けられた。



 スコット・ダウンヴィルは同性愛者で、夫との結婚のために、ダウンヴィル伯爵家から出ていた。

 ……俺も随分舐められたものだ。
 クレアはマリオンの友人だから、嫉妬からのちょっとした嘘なら見逃してやろう、と思っていたが。



 舞台はクレアの地元、王都に決めた。

 ブルーベルを騙し続けようとした罪は、贖って貰おう。



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