あの頃からあなただけが好きでした

「よくも、しれっと来れたわね!
 今更しゃしゃり出てこないでよ!」


 しれっと来れた、って?
 この場にマリオンを誘って、見せつけようとしたのはあんたでしょ、と文句を言いかけて。




 ……正直、そこからの事は何が何だか、という感じ。
 クレアがマリオンに詰めよって大騒ぎになり、入口から尻軽がこっちに向かって走ってきて。

 それを誰かが追い抜いた。
 そして手前のマリオンを突き飛ばして。
 突き飛ばされたマリオンにカーティスが手を伸ばして、倒れる前に受け止めて。


『なんだ、やっぱりこの男はマリオンが好きなんだ』

 そう思って。
 彼の腕の中に居るマリオンが女の子に見えて。
 見つめ合う初恋のふたりから目を離せなかったから。


 叫び声が上がるまで、クレアの方は見ていなかった。


 だからクレアが刺された瞬間を見逃してしまった。
 カーティスを追い抜いて、マリオンを突き飛ばした男は、クレアをナイフで襲った。



 全てをご覧になっていた神様からの鉄槌だと思った。
 クレアが知り合いに声をかけ、集めた『婚約披露パーティー』の場で。

 初恋を奪われたマリオンに見せつけるように、彼女を招いたその席で。

 神の鉄槌は下された。
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