あの頃からあなただけが好きでした
そんな妹からねだられるまま、父は大学入学を
機に家を出ることを許したので、俺としては疑問しかなかった。
実家だからこそ、クレアの行動もある程度抑えられていたのではないのか?
家族の監視が無くなれば、ますます歯止めが効かなくなるのではないか?
「今更クレアは変わらん。
それよりもエディに悪影響があるかも知れないからだ」
それが父の答えだった。
実家に同居している長男アダムの息子、エディは思春期を迎える頃だった。
男女関係に緩く、見え透いた嘘を吐き、夜中であろうと遊びに出てしまうクレアの姿はエディの目にどのように映るのか……
父はこれからバルモア薬局を継いでいく長男家族を最優先にしたのだ。
「腐りかけた果物を、同じ籠には入れてはいけないだろう」
『腐りかけた果物』
高校での教師との不倫の一件で、母は泣いたが。
父はクレアを見限ったのだ。
そのような経緯から、クレアからの結婚前提の恋人の話も信じがたい、と父ははっきり言った。
それは今回の婚約披露パーティーに関してもだ。
忙しいと顔も出さない妹の恋人。
同じ王都に居るのに彼からの挨拶がない事に、怪しむ父と悲しむ母。
両親に、俺はクレアから預かったエンゲージリングを見せた。